直接の知り合いから、「【声明】すべての運動にフェミニズムを!」への賛同を呼びかけられました。
【声明】すべての運動にフェミニズムを! FEMINISM FOR ALL MOVEMENTS!
呼びかけられる前に一読した時は、どうも内容に惹かれなかったので賛同せず、何の反応もせずにいたのですが、直接呼びかけられたとなると、知り合いのよしみで無碍にもできません。何度も読んで、なぜ魅力を感じなかったのかを考えて、お返事しました。
すでに賛同を表明した多くの知り合いに対して、わたしが考えなしに賛同しなかったわけではないことを示すために、ここに返答を公開します。
返答全文
わざわざありがとうございます。
声明に違和感があったのですが、その根源が何かわからず、何度も読み返して、ようやく気がつきました。
「男性特権」という言葉がありませんよね?
「特権」という表現をあえて避けたのには理由があると思います。貧困者男性や障害者男性、男性の性暴力サバイバーなどに「気を遣った」のでしょうか?
いずれにせよ、わたしは、このテーマで声明を出すのであれば、「男性特権」という言葉か、同様の意味を持つ言葉が不可欠だと思います。この概念により、「なぜ深刻なフェミニズムの欠如に至ったか」が説明できます。たぶん、ですが。
「なぜ」への言及が必要なのは、賛同者が目指す新しい秩序に言及する必要があるからです。深刻なフェミニズムの欠如に至った経緯を明らかにすると同時に、新しい秩序では深刻なフェミニズムの欠如に至らないことを示さなくてはなりません。
声明では、個別具体的な課題と意見は書かれていますが、それらが解決した社会がどんな社会なのかは、省略されています。わたしたちがどんな社会をつくりたいのかを提示することが、わたしたちに課せられた最大の問いだとわたしは考えています。
左派なら誰でも理解しているように、わたしたちは無関心層をオルグしないといけません。言葉を紡ぐ力のある人までが「ふわっとした」考えでいたら、抽象的な事柄に対峙するのが難しい人々に響く言葉は扱えないのではないでしょうか?
声明に対する率直な感想は「画竜点睛を欠く」です。
コロナワクチンの薬害を軽視する態度があまりにも露骨なので、わたしは仲間を心安く信用することができなくなりました。
ワクチンに対する慎重な姿勢を示すことすら憚られた「雰囲気」は、まさに多数派という権力がもたらしたと認識しています。だから、せっかくのフェミニズムのための声明を読んでも、どこか上滑りしているように見えてしまいます。
「あの人は陰謀論者だから」という、[賛同依頼者]さんもいた場所であった、第三者について噂するひそやかな声が耳から離れませんし、わたしにはそれに立ち向かう勇気が未だにありません。なぜわたしは、人は、ここまで弱くなったのか、どうすれば治せるのか、考え試す日々が続いています。
長々とすみません。声明には同意できません。ご容赦ください。
(返信おわり)
補足
“左派なら誰でも理解しているように、わたしたちは無関心層をオルグしないといけません。”
この箇所は、声明に感じられる「内向きな印象」から出てきた文章です。
友人らにも声明について感想を求めたところ、そのうちの一人も、「誰に向けて書いているのかよくわからない」と言っていました。わたしはその意見に同意しました。
わたしは「この声明は、既存の知り合いの中から反対意見が出ないことを狙って書かれたのでは?」という、裏の意図を感じざるを得ません。賛同者を得ることで価値を高め、匿名の呼びかけ人が自身の運動で利用するという、政治的な意図を、です。
「起草者が匿名だから、生じる価値を賛同者で共有できる」と取ることもできますが、そうであれば、対象読者が社会運動を担う仲間であることがはっきりと感じられる内容であるべきです。一般的にあまり知られていない単語や概念が連なる文章からは一目瞭然、そうはなっていません。どう見ても、書かれた内容にそのまま同意できる仲良しグループに向けて書かれたものです。その意味でも、この声明の出来はあまりよくありません。
“せっかくのフェミニズムのための声明”
「社会運動のため」ではなく「フェミニズムのため」と判定したのは、この声明が出された背景の一つに「フェミニストによるトランス差別の横行」があると想像したからです。「フェミニズムは差別を正当化するための理論ではない」という価値観を、この声明は含んでいるはずです。この点は評価に値すると思います。
おわりに
他人が書いた文章をけなすのは簡単かつ無責任なので、意見は書かずにおくつもりでしたが、冒頭に書いた理由の通り、ここに遺します。