経緯

20歳から続けてきたホルモン剤の服用。数年前から薬が手に入れづらくなったため、初診のGID外来で自宅近くの医師を紹介してもらい、2017年の7月から注射に切り替えた。

注射の方が効果が強いものと思いきやさにあらず、一年ほどした頃から、永久脱毛したはずの髭が徐々に生え始め、脇毛とともに脇の臭いが復活し、陰毛が長くなり、陰茎も長くなり、かつ起ちやすくなり、強めの女性ホルモンの効果で上がっていたタマキンは下がってきて、なんとなくハゲが進行した気もしてきた。

極めつけは、今年に入ってから頭に血が上りやすくなったこと。すぐ頭に来て、大声で威圧したり、手が出そうになったりすることが増えた。

同居している友人にこれ以上迷惑をかけるわけにはいかない。これはキンタマのせいだ。キンタマを取ればマシになるはず!

と一念発起。ちょうど貯金もできていたこともあって、キンタマを取る決心をした。

連絡はLINE

注射を打ってもらっている医師に訊いてみた。

りょう) 注射に替えてからかくかくしかじかで睾丸を取りたいのですが、どこか紹介していただけませんか?

先生) ちょっと待ってね……あ、これこれ、皆さんここによく行かれます。

先生はスマホであるホームページを見せてくれた。あとでページをよくよく読んだ。

まず、料金表を見た。

思ったより安い……。

いったいどういうつもりかと病院の紹介文を読んだ。

「GIDの治療に力を入れています」で料金表を載せるとは、やる気満々やな……。

医師の写真も載ってるし、先生もお勧めしてるし、大丈夫やろ。

この病院に股間への入刀を委ねることをひとまず決めて、連絡先を確かめた。

連絡は電話、メール、LINE……LINE!?

なんじゃそれ!

ラフやな〜。

すぐに連絡先を確かめて携帯の連絡先とLINEの友人に登録したものの、踏ん切りがつかず、数日間迷った。コロナ騒動の渦中であることはあまり気にならなかった。

金太マスカットナイフで切る

(痛そ〜)

https://sp.uta-net.com/song/23394/

にビビっていた。


ごぶさたですから…

ビビってはいても体の不快感は耐えがたく、平日の日中にLINEでメッセージを送った。

りょう) 睾丸摘出を受けたいので、手続き等教えてください。このご時世ですが大丈夫でしょうか?

病院LINE) 出来ますよ。希望日を2、3挙げて下さい。

こんな感じで病院とのフランクなやり取りが進んで、最後に「血液検査を受けてきてください」と伝えられた。手術日までは3週間あったものの、時はコロナ騒動の真っ最中。早めに受けに行くことにした。

血液検査は、主治医のところで注射のついでに受けることにした。そしたら、注射のついでだったためか、自費。高かった……失敗。

最短で2日後の夕方に結果が来るだろうと言われたので2日後の退勤後に赴いたところ、残念ながらそろっていなかった。

先生) まだHIVの結果だけ来てないんです。

りょう) わかりました。また来ます。まあ、最後に検査を受けてから“ごぶさた”なので何もないと思いますが。

先生) うひゃひゃひゃひゃ、そうですか。

主治医のこの笑い方、好き。


それ、聴かなダメですか…?

血液検査の結果が出そろったことをLINEで病院に告げると「当日に原本を持ってきてください」との返事。ばらけないように封筒にまとめた。

待ちわびた手術日は金曜日。略字なら金𫞂日。金玉を取るにふさわしい。

と言うのは後づけで、単に翌日が休みだからと週末を指定させていただいた。後から玉抜き日和であることに気づいた次第。

午後に半休することを現場に伝えたところ「休憩時間の間に退勤するのはやめてくれ」と言われたため、普段より30分早い朝8時に出勤して12時に退勤した。タクシーで京都駅に直行して新幹線自由席に飛び乗った。

1時間早く着けそうだったため、早く病院に行っても良いかLINEで尋ねたところ「いいですよ」との回答がいただけたため、駅を降りてまっすぐに向かった。

地上には日が照っていたため、地下で行く方法を探したところ、目の前まで行けそうだった。勇んで歩き出したものの、なかなかのラビリンスぶりで不安になったが、意外と一度も戻らずにたどり着けた。15分ぐらいかかったと思う。暑くて疲れてよれよれになった。

受付では優しげな看護師さんが迎えてくれた。血液検査の封筒を手渡してソファーで待っていると、5分もしないうちに奥から先生に呼ばれた。よっこらしょっと立ち上がってよぼよぼと杖をつきながら歩き始めたわたしを見た先生、

先生) あ、いいね、元気そうだ! 大丈夫だ。

これで元気てどういうこっちゃ!と思いつつ診察室へ。

りょう) 勝手を言って(早めてもらって)すみませんでした。

先生) いえいえ。早く来てくれた方が良かった。

荷物をカゴに置かせてもらいながら挨拶して、椅子に座った。

先生はいかにも「なんでもないこと」であるかのように、わたしの第一印象を話した。

先生) りょうくんは、「完全に女」とか「完全に男」じゃなくて、Xに近い感じかな?

りょう) はあ、はい、まあそうですね。

まさかこんなところでジェンダーアイデンティティを言わされることになるとは思わなかった! さすがに「“ない”です」と話を込み入らせるのも邪魔くさくて、流した。しかし「くん」って初めてだな。

先生はカルテ用の紙に15cmほどの直線を引いた。

先生) Xの人は男か女かにはっきり分かれない。ジェンダーアイデンティティというのは測れるものじゃないから、自己申告を信じるしかない。

りょう) そうですね。

先生) りょうさんは睾丸を取るということだけど、GIDを克服する方法は人それぞれ。手術を望む人もいればそうでない人もいる。

りょう) ええ。

これは、形式的に、“診断しました”という体裁を整えるために話しているのだろうか?

あまりにも教科書的なレクチャーだったため、「あえて」こんなくだらない話をしているんだと思った。でも、「この病院にはGIDだと診断する権限はないから、あまり言い訳には使えないだろうな……と考えたところで「時間の無駄だ!」と閃いた。

りょう) この話、聴かなだめなんですかね? 建前として話してはるんかなと気になってしまって。

生) えっ?

りょう) わたしは活動…映画祭とかやってたので、今更、大丈夫ですよ。

先生) あ! そーなの? LGBTの? じゃあ、いいか。

思わず話を止めてしまったものの、問題はなかったようだ。

すると、先生は、同じ紙に「ペニスの裏側」のイラストを書いた。続けてそのイラストのふぐり(玉袋)の真ん中に短い赤の縦線を引いた。さらに、中からびよーん!と飛び出した玉をつけ足した。玉が繋がる管にまた縦に線を引きつつ、

先生) この辺を1cmぐらい切って、ここでカット。それで縫って終わり。

切るのが一ヶ所とは知らなかった!楽そうだ。

何か訊きたいことはあるかと問われたので「中に血が溜まるリスクは、どのぐらいあるんですか」と訊いてみた。すると、先生は身振り手振りで教えてくれた。

先生) 500人やって1人か2人。少しぐらいの出血なら(袋の中で)吸収されるけど、あんまりたくさんあるとドンドコドンドコ溜まっていって、夏みかんみたいになっちゃう。でもちょっとずつだから、わかるのは翌朝。もしそうなったらまた来てもらわないといけない。

「夏みかん」には笑ってしまった。

先生) さ、じゃ、やるか。トイレは? いい?

先生がおもむろに両膝に手を当てて立ち上がった。本当に大したことない手術なんだなと思った。

りょう) どうしよう! 行きます!

文字にするとわたしも変なやつだな。

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